令和4年度 第 1 次試験問題 経済学・経済政策 第四問 解答と解説

解答

 

1.

 

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解説

 

文頭の「絶対所得仮説」は、経済学・経済政策において、重要な用語ですのでしっかり覚えましょう。ただ、ここを深堀していくと軽く10日分の記事が書けてしまうほど膨大な内容になります。気軽にさらっと読んでいける記事を目財していきたいので、ここではさらっとだけ、解答に必要部分のみを説明していきたいと思います。

 

まず、選択肢を読んでもわかるように、どうやらこの仮説とやらは消費にまつわる仮説であることは想像できると思います。絶対所得仮説とは、消費者が、どのような要因があって消費という活動をとろうとするのか仮定したものの、1つです。1つというからには、複数仮説は存在し、昔の高名な経済学者さん方が、我こそはと様々な仮説を提唱しているわけです。

 

その中でも、最も根本と言うべきかまず出てきたのが、かの有名なケインズさんが提唱した「絶対所得仮説」です。この仮説は非常に単純な話で、消費は今の所得だけに依存して行われる、というものです。過去の消費傾向や将来の所得予測、またはほかの人がどんな消費をしているかなど、全く影響を受けず人は、今なんぼ持っているかだけで消費するかどうかを決めているというものです。さらに、長期的に考えたときに、所得がどんどん増えていくと、所得に対する消費の割合は減っていくとしています。

 

本来だとここでケインズ型消費関数などを紹介するのが正しいのかもしれませんが、ざっくりとしたイメージだけにこの問題ではとどめておきたいと思いますので割愛します。

 

しかし、そのあと、絶対所得仮説の実証をやっていった人がいるわけですね。本当かよって。クズネッツさんという、非常に有名な経済学者です。所得増えると消費割合って本当に減るのかってのを実際に統計を出したんですね。しかし、実際やってみると、いやいや違うじゃん。ほとんど割合変わっていないよってことになったわけです。

 

想像してみると、まず生活がカツカツの人がちょっと裕福になってくると貯金考えますよね。そうなると消費の割合って下がるはずだ。たぶん、ここまでがケインズさんの仮説なんでしょうね。ただ今度貯金しようって考え方も頭打ちがあって、いやいやこれ以上貯金しても仕方ないし我慢せずに使っちゃおうってことになって、最終的には割合は変わらないって感じなんじゃないかな。

 

何にせよ、あれ、ケインズさんの仮説だけじゃあだめじゃんってことになり、その後、複数の追加仮説が出てきています。

まず絶対所得に対抗する形で、相対所得仮説があります。これは、過去にどれくらいの贅沢したか、過去の消費傾向から、今、5年前から比較して俺こんなに昇進してるじゃん。役割相当の贅沢しんきゃなっていうように、過去の消費傾向、所得から現在の消費を決定するという仮説です。そういえば、昔、人は裕福な暮らしには簡単に行けるけど、今より貧しい暮らしにはなかなかいけないという話を聞いたなぁ。かっこよく言うと、ラチェット効果(所得が減っても今より消費を減らさない傾向)と言います。

 

さらに流動資産仮説。これは他の仮説に付加するような仮説で、流動資産、つまり金にすぐ換金可能な資産、があればあるほど消費をするよってことですね。なんかこれを聞くと、ギャンブルで勝ったお金はすぐに使っちゃう的な仮説かと思っていましたが…、ちょっと違いますね。物価が下落して、流動資産が増えたように思えると、人は消費を増やしてしまうというようなことです。

 

そして最後が恒常所得仮説、これは将来的に所得が増えることが分かっていれば、人はそれに合わせて消費を増やし、逆に増える見込みがない場合は消費を減らすという仮説です。当たり前と言えば当たり前ですね。さらにこれに付随する仮説でライフサイクル仮説というものもあります。これは生涯で稼ぐお金を推定して、その平均を基準に消費を決めるという考え方ですが、そこまで先のことを考えて行動するものかと、ちょっと疑問です。

 

さて、代表的な消費要因の仮説を見てきたところで、問題に取り組みましょう。問題では、所得と消費の関係が問われています。

 

まず一つ目。

 

1.今月は職場で臨時の特別手当が支給されたので、自分へのご褒美として、外食 の回数を増やすことにした。 

➡ 最初の特別手当の支給は、所得の増加したと言えます。そして、その後の外食回数を増やすとは、当然、消費が増えるわけですね。所得が増え、それに合わせて消費が増える。まさに、「絶対所得仮説」に従った行動と言えますね。いきなりですが、これが正解です。

 

その他の選択肢も見ていきましょう。

 

2.将来の年金が不安なので、節約して消費を抑制することにした。 

現在の所得に関わる話ではないですね。どちらかというと恒常所得仮説についての例になります。

 
3.職場の同僚が旅行に行くことに影響を受けて、自分も旅行に行くことにした。

 現在の所得に関わる話ではありません。これも間違いです。

 
4.新型コロナウイルスの影響で今年の所得は減りそうだが、これまでの消費習慣 を変更することは困難なので、これまでどおりの消費を続けることにした。 

これはまさに相対所得仮説ですね。ラチェット効果というやつです。よって、謝りです。

 
5.賃上げによって給料が増えることになったが、不景気が当分続きそうなので、 消費は増やさないことにした。

これは現在の所得に関わる話をしていますが、それに合わせた消費行動をとっていないですので、絶対所得仮説に従った行動ではありませんね。これは将来の所得を心配しての行動であるので、恒常所得仮説になります。

以上で、解答は1となります。