令和4年度 第 1 次試験問題 経営法務 第十七問 解答と解説

解答

 

設問1:3.

設問2:2. 

 

解説

 

さて、引き続きの会話問題になります。が、突然の英語長文が出てきてびっくりします。いったい何でしょうか。とにかく読んでいってみましょうか。

甲 氏:「弊社は、Y社から商品を輸入し、国内で販売しようと考えています。それに当たって、Y社から届いた契約書案を検討しているのですが、以下の規定の中で、弊社にとって不利な箇所はありませんでしょうか。

どうやらY社は海外の企業みたいですね。契約書について質問を受けています。英文でちょっと驚きますが見ていきましょう。

 

9. Seller warrants to Buyer that the Goods purchased by Buyer from Seller shall be free from defects in raw material and workmanship.

「売り手は、買い手に対して以下のことを保証します。買い手により、売り手から購入された商品は、原材料や製造において欠陥が無いことを。」

Buyer shall indemnify and hold Seller harmless from and against any and all liabilities, damages, claims, causes of action, losses, costs and expenses (including attorneysʼ fees) of any kind, royalties and license fees arising from or for infringement of any patent by reason of any sale or use of the Goods.

「買い手は、売り手に対して、商品の販売または使用を理由とする特許侵害から生じる、または特許侵害のためのあらゆる種類の責任、損害、請求、訴訟原因、損失、費用、経費(弁護士費用を含む)、ロイヤリティ、ライセンス料から補償し、免責するものとします。」

英文を読んでいくとshallとあります。これは、かなり強めな文章、決まりであるんだぞと覚えておきましょう。そして、これは買い手がかなり責任を負わなければいけないような文章ですね。売り手がこの取引のために、特許侵害が生じたときに求められる賠償金やら、発生するロイヤリティ・ライセンス料は全部補償しろって言っているわけですね。

 

10. If Buyer terminates this Agreement and Seller has procured raw material for such releases occurring after the termination date in accordance with Buyerʼs product releases, Buyer shall purchase such raw material from Seller at a price determined by Seller.」

「 買い手が本契約を終了し、売り手が買い手の製品リリースに従って終了日以降に発生する当該リリースの原材料を調達した場合、買い手は売り手から売り手の定める価格で当該原材料を購入するものとします。」

これもやや買い手にとって、不利益な文章でしょうか。契約が終了したにも関わらず、原材料を購入しろって端的には言っていますね。 

あなた:「 9 条は、 [   A   ] という点で、10 条は、御社が本契約を解除した一方で、売主が契約終了日以降の御社の製品発売に合わせて、原材料を調達していた場合に、 [   B   ] という点で、それぞれ御社にとって、不利な条項となっています。」

甲 氏:「ありがとうございます。その点については、Y社と交渉しようと思います。また、Y社からは、日本での商品の小売価格につき、Y社が決めたものに従っていただきたいと言われています。」

あなた:「その点も含めて、知り合いの弁護士を紹介しますので、相談に行きませんか。」

甲 氏:「ぜひよろしくお願いします。」

さて、まず、X社は買い手なのか売り手なのかを明確にしないといけないです。まあ当然買い手ですね。つまり、Buyerとなります。上記、確かに2点について不利益な点があったかと思います。それを頭において、問題に入っていきましょう。

設問1

 

まずAから見ていきましょう。以下の2択のようですね。

  • 商品につき、売主が何らの保証もしない
  • 商品に特許侵害があった場合、御社が責任を負う

これは、後者ですね。何か特許侵害があった場合については、買い手であるX社が責任を負うことになるのでした。ちょっと前者も悩んだところですが、売り手は、原材料や製造において欠陥が無いことを保証していましたよね。よって、後者が正しいです。

次はBを見ていきましょう。売主が契約終了日以降の御社の製品発売に合わせて、原材料を調達していた場合に、[B] に入る言葉です。契約終了日以降の話です。

以下の2択ですね。

  • 売主が決めた価格で売主から当該原材料を購入する
  • 当該原材料がすべて消費できるまで、売主から製品を購入する

「Buyer shall purchase such raw material from Seller at a price determined by Seller.」:買い手は、売り手が決めた値段でそのような原材料を購入しなければいけない。

とありましたね。というわけで、前者が正解です。というわけで、3が正解になります。

設問2

 

「商品の卸売契約において、小売価格を拘束するような規定を定めることは、わが国では違法となる可能性」についてです。

これは覚えておくしかない類の問題になります。これは独占禁止法における再販売価格の拘束にあたります。メーカーが小売業者の販売価格を指定して、それを守らないような小売業者に圧力をかけるなどすることは禁止されています。

メーカーとしては、下手に価格が小売価格で下がって売られてしまうと、逆にその価格に落とさないと売れなくなってしまうので、これは時期にもよりますが、安易に下げたくはないのです。しかし、そんな小売業者に圧力をかけて、価格設定するようなことは最終的には、価格が強い企業にコントロールされてしまい、独占状態を形成しやすくなり、独占禁止法により禁止されているわけです。

以上より、答えは2となります。