令和4年度 第1次試験問題 運営管理(オペレーション・マネジメント) 第二問 設問1 解答と解説

解答

 

2.

 

解説

 

要素作業a~hの先行関係が下図に示される製品を単一ラインで生産する。稼働
予定時間は 700 時間で、目標生産計画量は 5,900 個である。ただし、設定サイクル
タイムは分単位の整数値とする。

 

まず、この問題文が何を言っているのか理解できないと話が進みません。

どうやら何らかの生産ラインをの工程を表していて、この生産には、a~hの「要素作業」というものが存在するらしいと。それぞれの要素作業には依存関係があるものがいて、それらが、問題文の図で表されているようです。

さらに右上に数値が入っていますね。これは要素作業にかかる時間を表しているようです。そして、問題文には、この生産を単一ラインで生産するとあります。これはライン生産方式のひとつであり、単一品種ライン生産とも呼ばれます。その名お通りで、そのラインでは、その1種類の製品しか生産しませんよっていうことです。

その他のライン生産方式としては、多品種ライン生産があり、さらに多品種ライン生産は、ライン切り替え方式と、混合ライン方式というように、そのやり方により区別されます。しかし、今回は、詳しい説明は省いていきます。

そして工程という単位が重要です。工程は各要素作業をまとめた単位です。工程ごとにも依存関係があり、前の工程が終わらないと次の工程を始めることができないと考えてください。そして、工程はそこに含まれる各要素作業が1セットという考え方で、これらの作業が全て終わると、再度、工程を開始することができます。

つまり、工程1が終わると、工程2に作業が引き継がれると共に、工程1は2回目の作業に入るわけです。つまり、全工程が同じ時間で完了する場合、以下のようなサイクルでの生産が行われます。 

しかし各工程の時間が異なると、開始のタイミングがずれて待ちが発生する可能性があります。この時の待ち時間を、「ロスタイム」と言います。ライン生産では、各工程をなるべく均一化することによって、ロスタイムを減らし、時間短縮ができます。工程の作業時間を均一化してスケジュールすることを、ラインバランシングと呼びます。

 

では、設問1に入りましょう。

目標生産計画量を達成することを前提に、生産ラインの各工程に要素作業を割
り付けた。その割り付けの組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

とにかく、700時間以内で、5,900個生産できりゃーいいってことですね。

問題の主旨としては、工程に要素作業を割り振ることです。工程が決まると、生産ラインの材料の投入サイクル(サイクルタイム)が決定します。後述しますが、サイクルタイムは、稼働時間と生産量の関係式により表されます。

まず、図をよく見てみましょう。経路が3経路あるのが分かると思います。この経路に関しては、それぞれ前後で依存しているため、必ず、この順番でないと実行ができない経路になります。

 

 

①:a -> b -> d -> g -> h

②:a -> b -> e -> g -> h

③:a -> c -> f -> h

 

そして、ここで被っている要素があって、aとbとgとh です。これらの要素では、待ち合わせが発生するので、工程に割り付ける際に注意が必要です。各工程の途中で、別工程の待ち合わせしないように割り付ける必要があります。

さて、では選択肢を見てみます作業要素の依存関係が破綻していないかも確認していく必要があります。

1.第 1 工程:a      第 2 工程:b、c    第 3 工程:d
第 4 工程:e、    第 5 工程:f、g

工程表に表したのが以下です。一見良さそうですが、依存関係を考えたときに、要素作業hが要素作業gよりも前の工程に入っているので、ここでデッドロックしてしまいます。よって、これは不可です。

工程 要素作業 作業時間合計
1 a 2.9
2 b,c 6.3
3 d 5.7
4 e,h 6.1
5 f,g 6.7

 

 

2.第 1 工程:a、b    第 2 工程:c、e    第 3 工程:d
第 4 工程:f、g    第 5 工程:h

特に要素作業には、矛盾がなさそうです。工程表に表してみましょう。

工程 要素作業 作業時間合計
1 a,b 6.7
2 c,e 3.7
3 d 5.7
4 f,g 6.7
5 h 4.9

最も時間がかかる作業時間の工程がサイクルタイムとなりますので、6.7になりますね。

 

3.第 1 工程:a、b    第 2 工程:c、f    第 3 工程:d、e
第 4 工程:g、h

とりあえず、要素作業の順序に矛盾はなさそうです。

 

工程 要素作業 作業時間合計
1 a,b 6.7
2 c,f 7.2
3 d,e 6.9
4 g,h 6.9

サイクルタイムは、7.2ですね。

 

4.第 1 工程:a、b、c  第 2 工程:d、e、g  第 3 工程:f、h

矛盾はありません。 

工程 要素作業 作業時間合計
1 a,b,c 9.2
2 d,e,g 8.9
3 f,h 9.6

サイクルタイムは9.6 

 

5.第 1 工程:a、b、e  第 2 工程:d、g    第 3 工程:c、f
第 4 工程:h

違和感のある順序ですが、矛盾はありません。

工程 要素作業 作業時間合計
1 a,b,e 7.9
2 d,g 7.7
3 c,f 7.2
4 h 4.9

サイクルタイムは7.9ですね。 

 

除外される選択肢1以外を整理すると以下の通りです。

赤いところは、最長時間の工程、つまりサイクルタイムになります。

さらに、ロスタイムの大きさを視覚的に表した以下のよう図をピッチダイアルラムと呼びます。さて、ちょっと勘違いすることが多いと思いますが、ライン生産の場合、全工程のサイクルを、各工程が均一であろうがなかろうが、いずれにせよ統一します。それはつまり、最長時間の工程に合わせるということです。この時間、つまり最長時間のことをサイクル時間、またはピッチタイムと呼び、材料を投入する間隔となります。


サイクルタイムは、このことから製品の生産量を表すことが可能です。以下がその式です。

 サイクルタイム=稼働時間 / 製品生産量

 

今回、稼働予定時間、目標生産量がすでに出ているので、これを当てはめると、目標サイクルタイムが出てきます。

サイクルタイム <= (700 / 5900) = 7.12(分)

つまり、サイクルタイムは7.12分以下である必要があります。これを満たすのは、2だけですね。ということで2が正解となります。

 

問題の解き方のポイントとしては、まずは矛盾した工程をはじく、そして各工程の時間を求めて、サイクル時間を求める。というのが、だいたいの手順です。