令和4年度 第 1 次試験問題 企業経営理論 第三十ニ問 解答と解説

解答

 

設問1:1.

設問2:1. 

 

解説

 しばらくは出るであろう、コロナ関連問題です。知識問題というよりは、思考問題です。

 

設問 1

 

1.元来、メーカーにとって工場で生産した製品を流通業者に販売した時点でビジネスは終了することが多かったが、近年は最終消費者への販売後の使用や消費の場面を含めてビジネスを設計する必要性が説かれている。このような傾向は「製造業のサービス化」と呼ばれる。

あまり、「製造業のサービス化」は聞く用語ではないです。新しいサービス形態であり、時事問題対策で、少なくとも目を通しておきたい用語ではあります。

モノづくり日本と言われ、高品質なモノを作ることが得意であった日本ですが、時代は移り、人の関心はモノからサービスに移りつつあります。モノ自体よりもそれから生み出される付加体験に価値が移りつつあります。サブスクなどの流行もその一端であると言えるでしょう。顕著なものではIoTです。今や家電はインターネットにつながり、製造メーカーは、付加的なサービスを提供するのが、当たり前になってきました。オーブンレンジには新しいメニューが届いたり、お掃除ロボットは日々のお掃除記録を残してくれたり、製品メーカーは作るだけでは顧客は満足できない時代になり、その先のサービスを求められます。これが、「製造業のサービス化」というやつです。

そして問題文を見ると、まさにそのことについて説明した文章であることが分かるでしょう。よって、これがいきなりですが、正解です。

 

2.顧客がサービスを購入し対価を支払う時点を指して「真実の瞬間」と呼ぶが、このときサービスの品質やコストパフォーマンスに関する顧客の知覚が最も鋭敏になる。

重要用語である「真実の瞬間」をしっかり覚えておきましょう。

 

真実の瞬間 

 

真実の瞬間(しんじつのしゅんかん、Moments of Truth)とは、顧客が企業の価値判断をする瞬間のことである。赤字体質に陥っていたスカンジナビア航空をわずか1年で再建に導いたヤン・カールソン英語版により提唱された。

顧客が実際にその企業の提供する製品サービスに接するあらゆる瞬間が「真実の瞬間」となりえ、そのときに企業姿勢を疑いたくなるような瞬間があればその企業からの購買を取りやめる可能性がある。これは一般の顧客満足度調査には現れないが、顧客の購入の意思決定に直接に関係するものである。

真実の瞬間での対応に失敗すると、企業のあらゆる努力は吹き飛ばされ、顧客に「二度とこの企業の製品、サービスは購入しない」と心に決めさせてしまう。さらにこのときに顧客が感じた不快な経験は個人に止まらず、速いスピードで人に語られ、広まっていく。

 

「真実の瞬間」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2016年10月23日 (日) 05:51 UTC、URL: 真実の瞬間 (経営学) - Wikipedia

 つまりは顧客が実際に製品・サービスに触れるとき、その瞬間のことであり、その際の企業姿勢は、非常に重要で、そこで失敗すると致命的だよっていう話ですね。

特にサービス業などは、直接顧客とやり取りするわけなので、重大な瞬間になります。美容院などは髪を切ってもらっている間がまさに真実の瞬間といえるでしょう。ただ単に髪を切るだけではなく、その姿勢によって、もう来ないってなることもあります。

お店の公告がすごく印象が良くて、製品も最高で、アフターケアも最高らしいブランド服を買いに行ったら、すごく店員態度が悪くて、ドン引きして買うのを止めるとかありますよね。

さて、問題文に戻りましょう。「購入し対価を支払う時点」は、真実の瞬間ではありません。誤りです。これはサクッと判断したい。

 

3.サービスに対して消費者が感じる品質を知覚品質と呼ぶが、近年はスマートフォンのアプリなどを通じてデジタルで統一的にサービスが提供されることも多く、この場合はすべての消費者にとって知覚品質も一定となる。

知覚品質については説明はその通りです。消費者が購入しようとして、その製品を調べ、その他の類似製品、代替製品と比較して、感じ取るその優位性、品質を知覚品質と言います。

「スマートフォンのアプリなどを通じてデジタルで統一的にサービスが提供されることも多く」。まあ、これはそうかな。特に違和感はないですね。

「この場合はすべての消費者にとって知覚品質も一定となる。」。この手の一定となるとか、決めつけているのは一度、疑っても良いかもしれません。そんなわけがないですよね。サービス提供形態により、知覚品質が同じになるなんてことは、決めつけられないです。提供形態がアプリで統一されることによって、ある種の品質は一定になる部分というものも出てきますが、すべて一緒なんてことはありません。所詮は中身です。これは誤りです。

 

4.サービスの特徴として、無形性、不可分性、異質性などとともに消滅性がしばしば指摘されるが、近年の SNS の浸透などによって、サービス提供の場面が撮影・録画の上で共有されるケースが増えてきたため、消滅性の問題は解消されつつある。

サービスには4つの特性があると言われています。

その4特性とは、上記の通り、無形性、不可分性、異質性、消滅性です。

  1. 無形性:購入するような製品は形があります。しかし、美容院などには髪を切る、ヘッドスパを受けるなど、具体的な形がありません。これが無形性です。
  2. 不可分性:不可分、つまり分けられない性質ということです。サービスは、生産とともに消費が発生します。美容院が例えに用いられることが多いでしょう。ヘアカットというサービスが開始されるとともに、完結します。そして重要なのが、サービス提供者とサービスを享受する者が同じところにいるということです。
  3. 異質性:全部のサービスがそうかなというところもありますが、品質は応対する人により異なりますよということです。昨今はデジタル化により、このへんは同質になるサービスもありそうですがね。
  4. 消滅性:サービスは、在庫を抱えることはありません。サービスなんて在庫にもてませんので。その場で生産・消費されなくなるということです。

さて、問題文に戻りますが、別に記録されても、それが在庫になるわけもなく、単に記録され、SNSでサービスが拡散され、サービスが気になっている人が目に見ることができるということです。あえて解決しているものを言うなら、無形性になるでしょう。よって、誤りです。

 

5.製品と同様にサービスにも、探索財、経験財および信用財がある。これらのうち信用財とは、サービス提供者の信用が特に重要となる高級ブランドや高価格のサービスなどを指す。

 少し判断が難しいかもしれません。まず探索財、経験財および信用財が分かる必要がありますね。

  1. 探索財:製品やサービスについて、事前に調査してから、その製品を購入するかサービスを受けるか決めることができるモノである。
  2. 経験財:経験をして初めて、その商品の良し悪しが分かるものです。レストランなんかは行って、食べてみないと分からないですよね。しかし、ここ最近は、SNSなどで情報が得ることができ、経験財の探索財化が進んでいます。
  3. 信用財:これは医療であったり、弁護士とか専門性が高く、事前に調べても、分からず、実際経験しても品質を判断しにくい商品・サービスです。

問題文を見てみます。信用財が「高級ブランドや高価格のサービス」となっていますが、高級だから専門性があるわけもなく、少なくとも経験すれば分かるはずですね。ということで誤りです。

以上より、1が正解です。

 

設問 2

設問2は顧客満足についてです。こちらも問題文を見ていきましょう。

 

1.企業が高い顧客価値の提供を通じて高い顧客満足を達成した場合、当該ブラ
ンドにロイヤルティを形成した顧客は真のロイヤルティを有する顧客であるか
ら、その時点では、見せかけのロイヤルティを有する顧客が含まれる可能性は
低い。

見せかけのロイヤルティとか、真のロイヤルティとか出てきました。見せかけのロイヤルティとは、定期的に買ってはいるのだけど、別にそのブランドに対して、愛着があるわけでもなく、何かのきっかけで、別のブランドに移行する可能性がある顧客についてです。

真のロイヤルティはその逆で、すでにブランドに対する信頼が形成されており、愛着を持って購入をしている状態です。

その他、実は好き、または気になっているのだけど、まだ購入にいたっていない顧客のことを、潜在的なロイヤルティと呼びます。

この文章は、明白に正しいですね。この状態で、見せかけのロイヤリティを持った顧客は少ないはずです。

 

2.顧客満足を高い水準に保つためには、サービスの現場においてスマートフォ
ンのアプリによるアンケートなどを活用して顧客の意見や不満などを常に確認
し、顧客の要望はすべて実現する必要がある。

ちょっと判断しにくいかもしれませんが、すべて実現する必要があるっていうところで、違和感を持つことはできると思います。すべての顧客の要望に対して応えることはできれば最高かもしれませんが、これは不可能です。品質を高めてほしいというのと、安くしてほしいという要望は、バーターな関係であり要望に応えるバランスが重要です。もちろん要望を確認することは重要ですが。よって、誤りです。

 

3.これからあるサービスを利用しようと考えている消費者にとって、サービス
の品質は事前に把握できるのに対して、サービスの満足は利用してみなければ
分からないという点で異なっている。

「サービスの品質は事前に把握できるのに対して」。昨今は、SNS等でサービスの品質を知ることはできなくはなくなってきたという話はしましたが、できると言い切るには違和感があります。

「サービスの満足は利用してみなければ分からないという点で異なっている。」。満足度などもSNS等で得ることができますが、自分の満足度って確かに経験しないと分からないところもあるので、この問題を明確に間違いだって言うのって難しい気もしますが、普通に考えると前段で誤りであると判断できます。

 

4.相互に競合するいくつかのブランドのサービスの中で、消費者が特定ブラン
ドのサービスを長く利用することは、それだけで当該消費者がそのブランドに
対して高い顧客満足を感じている指標となる。

これは、ちょっと難しい。一見、矛盾ないのではないかって読めそうです。しかし、文章をよく見ましょう。「それだけで当該消費者がそのブランドに対して高い顧客満足を感じている指標」。「それだけで」は、代表的なひっかけ選択肢です。それだけでは、顧客満足を感じているという判断はできないです。何か愛着があるわけでもないのだけど、このシャンプーずっと使っている。歯磨き粉ずっと使っているっていうのがあります。いわゆる見せかけのロイヤリティです。よって、誤りです。

5.品質の測定に関して、製品の品質は物理的に測定可能なのに対し、人間に
よって提供されるサービスの品質を測定することは困難である。このような
サービスの品質を測定するための 1 つの尺度として顧客満足が用いられるが、
製品の品質を測定するために顧客満足が用いられることはない。

顧客満足度を、品質測定に使用することがサービスはOKだけど、製品はNGっていうのがとても違和感がありますね。逆に、顧客満足度の測定方法にもよりますが、基本的には、品質が悪くて、顧客満足度が高くなることはあり得ないでしょう。顧客満足度は、サービス・製品どちらの場合においても、品質の尺度となりえます。

 

以上より、正解は1です。