令和4年度 第 1 次試験問題 企業経営理論 第二十ニ問 解答と解説

解答

 

3.

 

解説

人事評価に関する話は、資格試験を抜きにしても、普段の仕事で聞くことも多いですし、ホットな題材ですので、今後も頻出する可能性があります。

深く知識が必要な話ではないので、ひとつひとつ引きだしを増やしていきます。ここでは、問題文から学んでいきましょう。

 

1.360 度評価では、評価者からのフィードバックの客観性を高めるために、従業員が所属している部門内の直属の上司、同僚、部下に範囲を絞って評価者を設定することが望ましい。

360度評価は、昨今においても企業が取り入れているところが多い評価方法です。特徴として、単純に上司だけが評価するのではなく、対象者の同僚であったり部下、さらには取引先や、やり取りがある関係部署担当者など、対象者の関係者すべてに評価をしてもらう仕組みです。

上司だけではなく、まわりの同僚や部下なども含めて評価がされるので、様々な角度からの結果を得ることができます。また、客観的な評価も入り、公平性が出て、本人の納得感も高くなります。

問題文のように、同じ部門内に制限はしないことが望ましいです。よって、誤りです。

 

2.コンピテンシー評価とは、優れた業績をあげるための知能や性格といった従業員の潜在的な特性に基づいて、従業員の職務成果を評価する手法を指す。

まず、「コンピテンシー」とは、優れた仕事をする人の、行動特性をピックアップして、これらを目標として設定し、これを評価基準として評価する手法になります。ポイントとしては、どのような行動特性をピックアップするかです。成績が優秀な人材には共通点があります。アウトローな人材が、奇抜な行動を評価基準にしても、他の人に当てはまるとは限りません。共通点をモデル化するのが重要です。また、具体的な行動を選ぶことも重要です。具体的であればあるほど、評価対象者にフィードバックを与えやすく、理解も得やすいものです。

さて、問題文に戻りましょう。「知能や性格」にフォーカスがあたっていますが、違います。具体的な行動にフォーカスしなくてはいけません。よって、誤りです。

 

 

3.従業員に自らの職務成果を自己評価させることには、従業員と上司との間で職務成果に関する議論が活発になる利点がある。

合っています。というか、反論のしようがない選択肢です。何かの知識とかではなく、まあそうだよねって選択肢です。自己評価をさせる企業は多いのではないでしょうか。自分の貢献なんどを説明させ、それに対して議論を行うことにより、従業員と上司で、議論が発生し、理解が生まれます。しかし、自己評価にはいろいろ気を付ける必要もあります。個人により厳しく自分を評価する人、甘く評価する人、人それぞれです。どれが良くて悪いということではありませんが、自己評価をそのまま鵜呑みにするのではなく、やはり上司は部下のことをちゃんと理解できていなければいけません。

選択肢としては正しく、これが正解ですね。

 

4.上司の職務成果を直属の部下に評価させる場合は、不正確な評価を行った部下に対して上司が指導を事後的に行えるように、記名式で評価させることが望ましい。

なんかいろいろダメだなっていうのは、何となく分かりますよね。360度評価でもあるように、部下に評価をさせることはあります。しかし、不正確な評価を行った部下に指導するっていうのはよろしくないです。こうなると、良い評価しかできなくなって、ある意味パワハラ状態になってきます。場合によっては、記名式で評価させるべきではありません。

よって、4は誤りです。

 

5.組織におけるエンパワーメントの考え方に従えば、従業員の職務成果の評価者を直属の上司に限定し、従業員による自己評価の機会を認めるべきではない。

エンパワーメントとは何でしょう?

エンパワーメント

一般的には、個人や集団が自らの生活への統御感を獲得し、組織的、社会的、構造に外郭的な影響を与えるようになることであると定義される。和訳例は権限付与権限委譲自信付与強化湧活(ゆうかつ)など。エンパワメントの考え方は昨今大きな広がりを見せ、保健医療福祉、教育、企業などでも用いられている。広義のエンパワメント(湧活)とは、人びとに夢や希望を与え、勇気づけ、人が本来持っているすばらしい、生きる力を湧き出させることと定義される。1980年代に、ウーマン・リブなどの運動のなかで使われるようになった言葉である。

対義語はディスエンパワーメント。エンパワーメントされていない状態のことをいう。

「エンパワーメント」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年3月22日 (火) 09:43 UTC、URL:  エンパワーメント - Wikipedia

 

潜在能力を引き出させるとか、権限を委譲するとか、そんな意味です。上司が、ひとりですべての作業をやってしまっては、部下は自分の仕事しかせずに、育っていきませんし、仕事にも慣れてしまって、本来の潜在能力を出し切れません。

そこで、部下に自身の権限の一部を委譲して、責任のある仕事をさせることによって、自律性を高め、意識的に自発性を高めることに繋がり、自己評価をさせることにより、上司と部下との意見交換も活発になります。

「従業員の職務成果の評価者を直属の上司に限定し」は、上司に限定する必要はありません。360度評価などのように、多くの評価者がいて構わないはずです。

「従業員による自己評価の機会を認めるべきではない。」自己評価を認めて、上司との議論を増やすことができます。誤りです。

以上より、正解は3です。