令和4年度 第 1 次試験問題 企業経営理論 第二十問 解答と解説

解答

 

1.

 

解説

引き続き、組織関連の問題です。「共通の組織形態を持つ組織個体群と環境の関係を分析する理論」いったい何を理論にしようとしているのかも、分からない説明文です。理系の人間にはこういった文章は非常に辛いので、用語が分からないとチンプンカンプンな状態に陥りがちです。そこまで頻度は高くないかと思いますが、過去にも出ているので、油断はできない項目です。

まず、このモデルの提唱者はハナンとフリーマンという人達です。ハナン・フリーマンって一人の人名かと思っていたら、別人なんですね。

さて、まずこのモデルがどういう理論なのか説明します。その前に、この理論の前に、コンティンジェンシー理論というものがあります。これは、組織は環境が変われば、組織もそれに適応して、どんどん変わっていくよっていう理論です。

個体群生態学モデルとは、それには限界がある。そこまで組織とは柔軟に変われない組織もあって、自らの習慣、文化により環境に馴染めない組織があり、そのような環境に適応できない組織は、環境に適応できた組織、または新しい組織に淘汰されていくだろうというものです。

たとえば、昨今でDXが叫ばれていますが、いやいやうちはアナログから乗り換える気はないねとか、ハンコの業者との関係もあるしなど、特に日本などは古い文化を引きずって、そのような新しい文化に馴染むのが遅い傾向があります。このような組織は、早くらデジタル化戦略を取り入れた組織に圧倒的な差がついて、淘汰されてしまいます。

やっぱり、このような概念レベルの選択肢を見るときは、明らかな正解を見つけるか、判断がつかないものを飛ばして、消去法で攻めるのが定石です。

 

1.既存の組織形態を保持しようとする力が強ければ、新たな組織形態が生まれる可能性は低くなる。

ん、いきなりですが、正しいですね。アナログ世代が強い発言権を持っていると、デジタル戦略は立ち遅れ、そのような組織が生まれる可能性は低くなります。これが正解です。

 

2.個体群生態学モデルでは、環境の変化に対して自らの組織形態を柔軟に変化させて対応できる組織群が選択され、長期にわたって保持されることを示唆する。

なんか深く考えてしまうと、ちょっと迷ってしまう文章です。通常はそんな環境に対応できない組織が多いけど、適応できた組織が他を淘汰して、長期にわたって保持されるみたいに読むと、よくわからなくなってしまいますが、これは誤りです。素直に読むと、これはコンティンジェンシー理論です。

 

3.組織内の部門が緩やかな結合関係にある場合、変異が生じる可能性が高くなるが、保持されている既存の組織形態の存続の可能性は高くなる。

「穏やかな結合関係にある場合」というのが難しいところです。疎な関係である場合は、変異の可能性が低くなるというのは良いでしょう。外部の空気が流れ込まないと、組織内は部門ごとに閉鎖的になります。密接な結合関係にありすぎると、それぞれの風土が育たなくなり、周りに影響されすぎて、変化が遅くなります。穏やかな結合関係の場合、それぞれの部門の風土が育ちつつ、外部の空気が入り、それぞれの変化の可能性が高くなります。ここまでは合っています。

 後半はどうでしょう。「保持されている既存の組織形態の存続の可能性は高くなる。」って、変異するのにそれはないでしょう。これは誤りです。

 

4.変異段階で新たに生まれる組織個体群は、既存の組織から派生してくるケースは少なく、独立した企業者活動を通じて生み出される。

「変異段階で新たに生まれる組織個体群」というのも、イメージが難しいかもしれませんが、つまり新しい環境変化に適応していったものたちということです。これは当然既存の組織の中で生まれて、適応できないひとを淘汰していきます。

 

5.変異によって生まれた組織個体群は、政府などによる規制や政策によって選択・淘汰されるが、規制が緩和されれば保持される組織形態の多様性は減少する。

 前半部分は正しいです。規制・政策により、出ている杭は打たれる感じになります。そして、その規制が緩和されると、一気に変化は様々な形態に広がり、多様性を生み出します。よって、後半は誤りです。

 

以上より、1が正解です。