令和 4 年度 第 1 次試験問題 企業経営理論 第七問 解答と解説

解答

 

5.

 

解説

 

ファミリービジネスの 4 C モデルについて。いまいち馴染みが無いかもしれません。Webで検索してもそこまで出てくるものではありませんが、Miller と Breton-Miller による同族経営についての理論です。

同族経営を進め得るうえで、以下の4つのCのバランスを取るように進めなくてはいけないとしています。重要なのが、4つが単純に大事だと言っているのではなく、それぞれ行きすぎないようにバランスを取るべきだと言っていることです。

  1. 継続性(Continuity)
  2. コミュニティ(Community)
  3. コネクション(Connection)
  4. コマンド(Command)

しっかし、3Cモデルとか、頭文字をとるの好きだなぁと思います。絶対、覚えやすいように無理やり作ったろって、思ってしまうんですけどね。

そして、この問題、個人的には難しい気がします。1次試験だと、浅く広くやっている人が多いと思いますが、確信もってこの問題に解答するには、深い理解が必要に思えます。この問題は、選択肢を読みながらやってみましょう。

 

1.4 C モデルは、 4 つの要素の中で自社の特徴を最も発揮できる要素を発見し、それを強化するためのものである。

これはまだ分かりやすいです。独自の強みというところで、ファミリービジネスとは関係なくて、これは前に出たVRIO分析に関する説明です。VRIO分析とは、経済的価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣可能性(Imitability)、組織(Organization)という観点から、自社の事業の分析を行い、ポジショニングの分析や、自社の強みを明確にして、どのように進むべきか戦略を考える指針としていました。この説明は、VRIO分析であると考えられます。

このように、同じ分野に関する説明が誤った選択肢ではされているケースが多いです。その場合、引き出しの多さはもちろんのこと、微妙な言い回しに惑わされないだけの理解が必要になってきます。よって、これは誤りです。

2. 4 C モデルは、家族、企業の所有者、経営者など複数の属性を持つ構成員から成り立つファミリービジネスの複雑な利害関係を解決するためのものである。

この選択肢のようなのが恐ろしいところです。広く浅く勉強していた人は、ファミリービジネス関連だよなぁってふらふらとこれを選んでしまう可能性があるのかなと思います。先に言ってしまうと、この説明文はスリー・サークル・モデルに関するものです。

スリー・サークル・モデルでは、家族・所有者・経営者という立場の異なる観点から、ファミリービジネスの利害関係を分析して、タイプ訳を行い、障壁を解決していくというものです。やはり、ファミリービジネスでは、単なるビジネスで割り切れない人間関係性が発生することで、このような分析モデルが必要となってきます。(歴史を振り返ると、いろいろと問題が出てきた大企業が山ほどありました。)ファミリービジネス、そして、家族・所有・経営というキーワードを見たら、スリー・サークル・モデルと思ってよいでしょう。

よって、これは誤りです。

 

3. 4 C モデルは、競争優位の確立とファミリー固有のビジョンや目標を両立させるためのものである。

これは、ファミリービジネスを永続的に成功に導くための、PPPモデル(パラレル・ぷラニング・プロセス)についてです。言ってみれば、ファミリー側の視点、およびビジネス側の視点を並列で見ていく指針です。よって誤りです。やっぱり、やっぱり同族経営が続くと、ビジネス的な観点がかけていくことがあります。それに溺れていき、時代に取り残されていくと、企業は衰退していきます。これを防ぐためにも、ビジネス視点の観点を平行で入れる必要性を説いたモデルですね。

(あんまり詳しい話がどこを見てもないので、この辺は、論文とか読まないといけなくなってきますね。)

 

4.4 C モデルは、所有と経営を分離する過程で、ファミリービジネスの長所を維持するためのものである。

この辺は、エージェンシー理論、またはプリンシパル・エージェント理論と呼ばれるものです。通常、ファミリービジネスでは、所有と経営は分離していないケースが多い。所有・経営では株主と経営者という関係性が成り立ち、経営者は、同族でない外部のプロから選ばれるだろう。そのためファミリービジネスは希薄になっていく傾向がある。しかし、利益と成長がぶつかり、経営がうまくいかない、または不祥事に発展するなどのケースも少なくない。ファミリービジネスの長所は、成長と利益は一体として考えることができ、これらの理論はそれらを表した理論となっている。よって、誤り。

 

5. 4 C モデルは、それぞれの要素にプラスの側面とマイナスの側面があることを認めたものである。

この説明で、4Cモデルのことを表していると、これだけ読んで分かったら、すごく深く理解しているのだろうと思う。いくつかの選択肢がここまでのこって、この選択肢と併せ見て、まあこれかな。くらいの選択方法が普通だろう。プラス・マイナスの両側面があるモデルや理論なんて山ほどありそうで、なんとも一般論的な説明すぎて、決めてにかけるというのが正直なところです。

しかし、4Cモデルの重要な点は、最初に説明したように、バランスです。何かが行き過ぎてもいけないし、何かが落ち込んでもだめです。ある要素が行き過ぎないように、ある要素は抑制に働かなければいけない、そういった理論です。その重要点さえ押さえておけば、いくつかの選択肢を並べて、これが妥当と選択できるでしょう。

よって、これが正解です。

 

答えは5です。