令和 4 年度 第 1 次試験問題 企業経営理論 第三問 解答と解説

解答

 

1.

 

解説

 

組織の環境分析についてです。これも何等かの形で頻出と思います。純粋に知識問題となりますので、選択肢をひとつひとつ丁寧に見ていくことにしましょう。

 

1. 「PEST フレームワーク」では、企業を取り巻く外部環境を、政治、経済、社会、技術の観点から分析する。

「PESTフレームワーク」という連語はどうも聞いたことが無い気がします。PEST分析という名前で呼ばれていますね。

PEST分析 

 政治的 (Political)、経済的 (Economic)、社会文化的 (Socio-cultural)、技術的 (Technological)の頭文字を取ったもので、経営戦略論における環境スキャニングで使用されるマクロ環境要因のフレームワークのこと。これは、戦略的分析または市場調査を行う際の外部分析の一部であり、考慮すべきさまざまなマクロ環境要因の概要を示す。これは、市場の成長または衰退、事業のポジショニング、可能性と方向性を理解するための戦略的ツールである。

  • 政治的要因(P)は、政府が経済にどのように介入するかに関係する。具体的には、政治的要因には、税制労働法環境法貿易制限関税、政治的安定などの分野がある。政治的要因には、政府が提供または提供することを目的とする商品およびサービス(価値材)および政府が提供したくない商品およびサービス(負の価値財)も含まれる場合がある。さらに、政府は国の健康教育インフラに大きな影響を与える。
  • 経済的要因(E)には、経済成長為替レートインフレ率、および金利が含まれる。これらの要因は、企業の運営方法と意思決定に大きく影響する。たとえば、金利は企業の資本コストに影響を与えるため、企業がどの程度成長、拡大するかに影響する。為替レートは、経済における商品の輸出コストと輸入品の供給と価格に影響を与える。
  • 社会的要因(S)には、文化的側面と健康意識、人口増加率、年齢分布、キャリア態度、安全性の重視が含まれる。社会的要因の高い傾向は、企業の製品に対する需要とその企業の運営方法に影響を与える。たとえば、人口の高齢化は、労働力が少なく、意欲が低いことを意味する(したがって、労働コストが増加する)。さらに、企業はこれに起因する社会的傾向に対応して、さまざまな管理戦略を変更する可能性がある(高齢者の採用など)。
  • 技術的要因(T)には、 研究開発活動、自動化、技術的インセンティブ技術的変化の速度などの技術的側面が含まれる。これらは、参入障壁、最小効率の生産レベルを決定し、アウトソーシングの決定に影響を与える可能性がある。さらに、技術的変化はコストや品質に影響を与え、イノベーションにつながる。

「PEST分析」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2021年2月18日 (木) 07:18 UTCURL: PEST分析 - Wikipedia

あまりフレームワークというと、聞き覚えが無いなぁと思っていましたが、Wikiにはしっかりとフレームワークと書かれていますね。分析手法という認識でしたが、まあ、間違ってはいないのでしょうが、環境に影響を及ぼすその要因のフレームワークという意味なんですね。そして、その要因といおうのが、政治・経済・社会・技術という視点から、戦略的分析、市場調査を行う際の外部分析のフレームワークであるとのことですね。概要の下の、それぞれの要因の説明についても、ある程度理解しておいた方が良いです。

選択肢を見ると、そのまんまの説明が、問題文に書いていますね。 はい、いきなりですが、これが正解です。

 

 

2.「VRIO フレームワーク」によると、経営資源について、経済的価値が認められるか、希少性が高いか、模倣が困難であるか、その経営資源を活用できる組織能力があるか、という条件のうち、 1 つでも満たされていれば持続的競争優位に資する経営資源と判断される。

VRIO分析を、Wikiで調べてみましたが、英語しか出てこない・・・。こっちも有名だと思うのですが、なぜ日本語は無いのだろう。

ざっというと、VRIO分析フレームワークとは、その企業が何が強みで、何が弱みなのかということを分析するためのフレームワークです。かの有名な、ジェイ・B・バーニーが発案したことでも有名ですね。バーニーさんは、これでなくても、いろいろなところで名前を見かけるので、ひとつひとつ覚えていきましょう。

分析の視点は、以下の4点です。この4点について自社を客観的に分析し、自社の強みと弱みを明確にして、何に投資すべきなのかを決めるための指標になります。VRIO分析については、それぞれの意味についてもしっかり覚える必要があります。

 

1.経済的価値(Value

経済的価値とは、その資源があることにより、単純な売り上げが引きあがるのかいなかという、最も分かりやすい価値基準の分析要素です。しかし、当然そこに市場でのポジションなどの考慮は無く、単に今現時点での売り上げについての分析になります。

 

2.希少性(Rarity)

そのままですが、その資源について希少性を有するかです。その業界内で、希少な資源である場合、新規にその業界に参入する企業は少なく安泰な資源であると言えるでしょう。しかし、希少だからといって、必ずしも参入障壁が高いとも限りません。代替する資源による模倣や類似サービスにより、脅かされる可能性はあります。

 

3.模倣可能性(Imitability)

もし新規参入を試みた場合に、その参入障壁が高く、コストがかかり過ぎて入り込む余地が少ないかどうかになります。すぐに模倣されてしまうようなものに対して、大きな投資をすることは馬鹿げていますよね。

 

4.組織(Organization)

その資源に対して、組織的に利用する体制や技術が備わっているかどうかです。これが無くては、たとえ資源を獲得できたとしても、扱うことができなければ何の意味もありません。

 

VRIOの評価手法

そして、評価手法も重要です。VRIO分析は、V -> R -> I -> O の順序で評価を行っていきます。YES or NOで判定していきます。どこかでNOがつくと、それ以降はすべてNOと判断します。

そして、どこでNOになったかによって、その判定結果が定義されています。

 

1.経済的価値(Value)がNO :競争劣位

競争的に劣勢のため、基本的には投資すべきではない資源であると判断されます。

 

2.希少性(Rarity)がNO:競争均衡

希少性が乏しく、他との競争が激しくなることが予想されます。

 

3.模倣可能性(Imitability)がNO:一次的な競争優位

希少性があり、一時的に競争優位な状況にあります。しかし、将来的には模倣されるリスクなどあります。

 

4.組織(Organization)がNO:持続的な競争優位

模倣される可能性も少なく、持続的に優位なポジションを維持できます。ただし、組織体制が追い付いておらず、最大限に資源を活用することができていません。

 

そしてすべての項目がYESとなった場合は、組織として最大限にその資源を活用することができます。さて、問題に戻りましょう。「 1 つでも満たされていれば持続的競争優位に資する経営資源と判断される。」明らかに誤りですね。持続的競争優位と判断されるのは、模倣可能性がYESである場合になります。よって、誤りです。

ちなみに、この模倣可能性が最も重視されることが多い項目となっています。

 

3.「戦略分析の 3 C」はマーケティング環境を分析するための枠組みであり、資本、顧客、競合に着眼して分析を行う。

 続いて、3C分析です。まずはWikiを見てみましょう。 

3C分析 

企業マーケティングなどにおいて、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の観点から市場環境を分析し、経営戦略上の課題を導く分析ツールのひとつである[1]。元マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長でビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一が考案した。 

代理店などが重要な業界では、チャンネル(Channel)を加えて、4C分析と呼ばれることもある。 

「3C分析」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2021年4月6日 (火) 17:33

URL: 3C分析 - Wikipedia

日本人が考えていた分析手法だったのですね。3C分析は、マーケティングにおいて、以下の3つの観点から市場を分析する手法です。細かい分析手法などは、ここではいったん置いておいて、簡単にそれぞれの観点について説明をします。

 

顧客(Customer)

最も最初にやらなければいけないのは、顧客の分析です。顧客のニーズはもちろん、顧客の購買意欲であったり、経済状況など、何を今投入すれば顧客が食いつくのか、この分析をやらなければ、競合や自社の分析もできませんね。

 

競合(Competitor)

次に競合他社の分析です。競合の強みや弱みを分析することによって、その後の自社の分析することが効果的です。その他、具体的な販売ルート、販売チャネル、販売戦略など、競合他社が実際に何をやって、その結果どうなったのかを調べていくことは、自社の方針を決めるうえで、重要な情報になります。

 

自社(Company)

これまでの顧客分析と競合の分析結果と、自社の強みと弱みを合わせ見て、今後の方針を決めたり、投資するのか、撤退するのかを決定していきます。SWOT分析手法などが使われたりします。

 

では、問題に戻りましょう。「資本、顧客、競合に着眼して分析を行う。」分かりやすく、誤りです。顧客・競合・自社です。資本ではありませんね。

 

4. M.ポーターが提示した「価値連鎖(Value Chain)」は、価値がどの機能で生み出されるかを可視化する分析枠組みであり、購入物流、製造、出荷物流、サービスなどの主要活動と、技術開発、人事・労務管理、調達活動、販売・マーケティングなどの支援活動から構成される。

 まず、M. ポーターさんは、非常にお名前を拝見する人なので、名前と連動させて覚えましょう。価値連鎖は、ざっくり言うと、企業の各活動が、どのように付加価値を生み出していくのかを、体系的に表したフレームワークと言えると思います。「ポーターの価値連鎖」とも呼ばれていますね。以下のような図を見たことがある方も多いはずです。これが、価値連鎖です。

 


大きく活動が2つに分かれているのが分かります。「支援活動」と「主活動」です。主活動は、付加価値に直接結びつく活動と言えるでしょう。「支援活動」は、「主活動」を達成するため、または、企業を成り立たせるための間接的な活動と言えるでしょう。

割と、細かく、どの項目はどっちっていうような問題が出てくるので、これはどっち?くらいのことは答えられるように、覚えておく必要があります。

では、選択肢を見てみましょう。

購入物流、製造、出荷物流、サービスなどの主要活動

技術開発、人事・労務管理、調達活動、販売・マーケティングなどの支援活動

 惜しい。実に惜しい。販売・マーケティングは、支援活動ではなく、主活動ですね。よって、誤りです。繰り返しますが、このように細かく、項目ごとにどちらでしょうっていう問題が多いです。しっかり覚えておきましょう。

 

5. M.ポーターによる「 5 つの競争要因(Five Forces)」は、当該業界の成長性を決定する諸要因である。

 最後は、いわゆるポーターの「ファイブフォース分析」です。

 

 

ファイブフォース分析 

ポーターのファイブフォース分析(ファイブフォースぶんせき、英語Porter's Five Forces Framework5F)とは、マイケル・ポーターが提唱した、業界の収益性を決める5つの競争要因から業界の構造分析をおこなう手法。 

ポーターの著書『競争の戦略』で広く学会やビジネス界に知れ渡った。

「供給企業の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」という3つの内的要因と、「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」の2つの外的要因、計5つの要因から業界全体の魅力度を測る。

上記の外的要因は一般に生産や流通の面での技術革新により引き起こされる場合が多い。日本における例としては、それまでカメラ産業とはほぼ無縁であったCASIOなどの家電メーカーが、デジタルカメラの誕生という技術革新によってその業界に参入を果たし、業界全体が再編されたという事例を挙げることができるだろう

「ファイブフォース分析」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年2月18日 (金) 14:05

URL: ファイブフォース分析 - Wikipedia

 

これは、Wikiのとおり、収益性を決める5つの競争要因から、自社がどのように収益を上げていけば良いのか分析する分析手法です。

まず、5つの競争要因とは、Wikiから言うと、内的要因と、外的要因の2つに分けられます。つまり、内的要因とは自社の内部にまつわる要因、そして、外的要因とは自社を取り巻く、市場、業界、競合他社の要因になります。

<内的要因>

  • 供給企業の交渉力:自社とサプライヤーの力関係が適切であるか?
  • 買い手の交渉力:買い手市場になっていないかなど。
  • 競争企業間の敵対関係:競争の激しさ、差別化、価格競争など。

 

<外的要因>

  • 新規参入業者の脅威:新規参入してくる競合他社の脅威
  • 代替品の脅威:(安価な)代替品により、取って代わられる脅威

 

以下のような図で関係性が表さることもよくあります。それぞれの、内的要因、外的要因により、業界内の各企業の敵対関係が構成されていくということですね。

 

 

 さて、問題文を見ましょう。「当該業界の成長性を決定する諸要因である。」とありますが、これは違います。成長性ではなくて、収益性ですね。とはいえ、すぱっとこれは誤りって判断するのは、なかなか難しいかもしれませんけどね。

 

以上より、答えは1です。